管楽器入門
管楽器をもっと楽しむWebマガジン
search
【トロンボーン初心者のための】タンギングの仕組みと上達のための練習方法
最終更新:

【トロンボーン初心者のための】タンギングの仕組みと上達のための練習方法

丸く柔らかい音から歯切れのいい音まで、豊かで幅広い音色が魅力のトロンボーン。

そんな変幻自在な音を生み出すために欠かせないのが「タンギング(tonguing)」です。

初心者だけでなく経験者にとっても常に課題となるこの基礎技術ですが、楽器を演奏している時に口の中で何が起きているのかをしっかりと把握することが演奏の向上や問題解決の助けになります。

今回は、タンギングの仕組みから上達するためのヒントまで、ばっちり教えちゃいます!

タンギングの役割と仕組み

タンギングは舌を使って息の流れを区切り音の長さや形を整える技術で、息と舌を上手に組み合わせて演奏することで柔らかい音からパリッとした音までさまざまな表現が可能です。

まず、楽器を持たず口だけで「Ta」と言ってみてください。

発音する時に舌が動いているのがわかりますね。

舌が歯の(裏側の)付け根の辺りにぴたっとくっつき、離れると同時に「Ta」と発音されます。

この動きがタンギングです。

この舌の動きを、楽器で音を出しながら行います。

発音は先ほどと同じ「Ta」です。やりづらければ「Tu」も試してみてください。

tonguing

上の図の[A]と[B]を比べてみると、どちらも息の流れは同じですが、[B]は1拍ずつタンギングをすることで音(息)を4つに区切っています。

音符に合わせて息も「フッフッフッフーー」と細かく吐いてしまうとフレーズがぎこちなくなってしまうので、常に[A]のようなロングトーンを吹いているつもりで息を吐き、タンギングで音を区切るようにしましょう。

発音

通常は「Ta(またはTu)」、少し柔らかい音が出したければ「Da」……もっと滑らかにするなら「La」など、他にも選択肢はいくつかあり、より多くの発音を使いこなすことで表現の幅も広がります。

ジャズなどを演奏する際にはさらに多くの発音を織り交ぜながらニュアンスを出していくのですが、まずは基本となる「Ta」「Da」「La」などをしっかりと身につけることが大切です。

また、「た」のような「日本語の発音」は良い結果を得られることが少なく、楽器演奏の際にはあまりオススメできません(人それぞれなので一概には言えませんが)。

発音する時は「た・とぅ(タ・トゥ)」ではなく「Ta・Tu」というようなイメージでやってみましょう。

トロンボーンの場合、アメリカ、フランス、ドイツなど海外の演奏家の音を聴き比べてみると、それぞれの言語の特徴が音色にも表れていて面白いですよ。

舌の構造

ところで、皆さんは舌がどのような形をしているかご存じですか?

ここでひとつ面白い動画をご紹介します。

これはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のホルン奏者Sarah Willis(サラ・ウィリス)さんが、演奏中の口の中の動きをMRIで撮影した貴重な映像です。

この動画からもわかるように舌は喉から口の中の広い範囲にかけて生えているので、下顎や喉に力を入れてしまうと当然舌も自由に動けなくなり、タンギングが遅れたり、音を外したりする原因になります。

楽器を演奏する時は下顎、喉、首に余計な力が入らないようリラックスを心がけることが大切です。

また、肩やひじなどに力が入ると首も固まってしまうので、上半身の力みには常に注意しましょう。

上達のためのポイント

舌は突かずに、触れて離すだけ

タンギングは昔から教則本などで「舌突き」と訳されることが多いのですが「突き」なんていうと……じゃあ強い音を出したい時は「Taッ!Taッ!Taッ!Taッ!」と激しく舌を突けばいいのかな?なんて思ったりしちゃいますよね。

これは決して冗談ではなく、大きな音を出そうとする時に舌を激しく歯に叩きつけるように動かす人は意外と少なくありません。

音は息の力で作るもの、ということを忘れないでください。

どんな音量でも、舌が触れて・離れるという一連の動きを必要最低限の力で行えるようにしましょう。

舌が離れた後もリラックス

タンギング直後に舌の先端が緊張し固くなったまま口の中の高い位置で浮いているというのも、よくあることです。

先端が浮いたままだと息の流れを邪魔してしまいます。離れた舌はリラックスして、タンギングをする前にあった位置に戻るのが理想です。

先ほど紹介した動画でタンギング直後に舌がどうなっているか、もう一度見てみましょう。

舌の後ろ側は音域によって上がったり下がったりしますが、舌の先端はタンギングをする瞬間以外は常にぺたっと寝ているようになっています。

ロングトーンをしながら、タンギング直後に舌がどうなっているか最後までよーく観察してみてください。

顎(あご)は不必要に動かさない

タンギングをする時、舌と一緒に顎も動いてしまうことがあります。

これも、息の流れが悪くなる原因になります。

全く動かすな、というわけではありませんが、あまりに大きく顎を動かすのは避けたほうがいいでしょう。

発音する時になるべく顎(あご)が動かないように意識して練習してみましょう(これも、先ほどの動画をもう一度見てみてください。顎の動きはほぼ無く、舌が独立して動いています)。

ただし、動かないようにと余計な力を入れて固定しようとするのは逆効果ですのでご注意を!

大切なのは息の流れ

覚えておいていただきたいのは「タンギングをすることで音が出ているわけではない」ということです。

音というのは「息」です。

「息を出せば音が出る、息を止めれば音も止まる」

タンギング自体は音を出すものではなく、出てくる音(息)を四角くしたり丸くしたり、音の長さや形を整えるためにあるということをぜひ覚えておいてください。

演奏しているとつい舌の動きにばかり意識がいきがちですが、まずは息をスムーズに流し唇でしっかり音にすることが大切です。

音の出し方についてはこちらの記事を見ながら、よりストレスの少ない方法を探してみてください。

今回紹介したのは基本となる「シングル・タンギング」と呼ばれるもので、他にも、より早いフレーズを演奏するためにダブル・タンギング、トリプル・タンギングというものが存在するのですが、それはまたの機会に解説したいと思います。

まずは今回の記事を読みながら基本のタンギングをしっかりと身につけちゃいましょう!

ライタープロフィール

島田直道

トロンボーン奏者

島田直道

1985年生まれ。

栃木県出身。

高校からトロンボーンを始め、昭和音楽大学短期大学部 と専門学校 東京ミュージック&メディアアーツ尚美(現:尚美ミュージックカレッジ)を卒業。

現在は自身のラテンジャズユニットKiyoseción でのライブをはじめ、アーティストのバックバンド、レコーディング、トロンボーン講師、執筆などで活動。

https://www.facebook.com/kiyosecion

また、サルサなどラテン音楽の専門家としても研鑽を積み、これまでLA-33、Yumuri、HERMANOS YAIPEN、Charanga Habanera、Victor Manuelle、Maykel Blanco y su Salsa Mayor など海外ラテン・アーティストの来日公演にてオープニングアクト等出演、Marcelo Villar(ex-Mayimbe)、Juan Carlos "El Lobo de la Salsa"(ex-Adolecentes Orquesta)、N'Samble来日の際にはバックバンドも務める。

2014年~2015年にかけて、日本初の音楽理論Webマガジン「サークル」にて【ラテン音楽講座】を連載。

http://circle.musictheory.jp/

2016年、大編成サルサバンド ORQUESTA REGULUS(レグルス)を結成。

https://www.facebook.com/orq.regulus/

EL COMBO CREACION、Star Salsa、PORCO ROSA、ORQUESTA HAVATAMPA メンバー。

ウェブサイト:http://gauche-tb.com

Twitter:gauche_tb

このライター・クリエイターへメッセージを送る

記事一覧

続きを読む
続きを読む