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【リペアマンが教える】管楽器のメンテナンス。各症状の対処術まとめ

「自分でできる管楽器のメンテナンスについて」前回の続きです。

前回:【リペアマンが教える】管楽器のメンテナンス。基礎知識編

症状と対処術をまとめました。

日々のメンテナンスで役に立つと思いますので、ぜひブックマークしておいてください。

トランペットほかの金管楽器

金管の管内洗浄を一年以上やってない、ピストンオイルもたまにさす程度にしていたら、ある日突然ピストンの動きが悪く戻ってこなくなった

これはリードパイプ部から先にたまったヘドロが剥離してピストン動作部に送り込まれ、動きの邪魔をしていることが多くあります。

対処法

まずaピストンを抜いてヘドロをZippoOilを使って除去しピストンケース内もクリーニングロッドをつかって奇麗に除去します。

その後ピストンオイルいれて→ピストンガイドを外した状態で上から500回~1000回、ボトムキャップ外して底か500回~1000回ストロークします。

仕上げに再度aの作業を行います。

ヘドロは管内全般に回っていますので時間のある時に全体クリーニングもしておきましょう。

普段から毎回しっかりピストンオイルを入れるとともにトップキャップ、ボトムキャップ、ピストンの気道部のヘドロ量もチェックしておきましょう。

普通につかっているだけなのに、なぜか音色や抜けが悪くなってきた

これも上記ピストンの動き劣化に通じますが、以前クリーニングした際にヘドロが筒状にしかも層になってでてきたことがあり、これではメーカーのボアサイズの音響特性を体現することは不可能です。

聞くと食後歯磨きしないで吹く上に、さらに洗浄をほとんどしないということでした。

ヘドロはスライドやボトムキャップなどの可動部の隙間に入り込み、接着剤のような働きをして数日で固着させてしまうことがあります。

こうなると高額なリペアとなってしまいますね。

対処法

ヘドロのカルシウム成分が定着する前に3カ月~半年に一度か本体、スライドの管内を丸洗いししつこいヘドロには一晩中性洗剤付け(フェルト、コルク類カバー、はずす)して、ブラシでヘドロ押し出ししてクリーニングしましょう。

カルシウム化したものは歯垢と同じでスケーリングしないとなかなかとれません。

週に一度はボトムキャップやスライドを抜差しして動かしてあげましょう。

ピストンを分解、クリーニングして組み立てたら、なぜか息が詰まって吹けない、動きが悪くなった、バネのノイズがするなど(金管初心者によくあることとして)

よくこの症状で持ち込まれることがあります。

多くの場合、原因がキーガイドの角度間違い、ピストン番号ちがい、キーガイドがさかさま、左右逆などで、その場合一瞬で治ってしまうことがあります。

不思議なくらい慌ててしまうのですが、落ち着いて観察力を発揮しピストンを1本ずつ差し、番号やガイドの角度をチェックし正しく合わせ、バネ受けなどの正位置も確認しましょう。

以上自分で対処できることを中心に書いてきましたが、ほんの少しの扱い方の違いでリペアマンに任せたほうがいい場合もおこりえます。

例えば以下のようなキーのタイミングや気密性の改善、へこみによる動作不良などです。

リペアマンに任せるケース

サックスのキーのシャフトが曲がって、キーが閉じきらなくなった

もしこれがネックを強く握ったことなどによりオクターブキーでおこると音色、音域のコントロール不能になってしまいます。

小さなキーですが全体の音色に影響を及ぼす重要なキーで気密性、オープニングの精度をしっかりあげておく必要があります。

また、これに似たようなケースで、大きなキーであっても大抵はシングルの真鍮製のシャフトで曲がりやすいもので、サックスの表面やキーの汚れをきれいにふいたら、音の当りがわるく全般にレスポンスが悪くなってしまったなどよくおこります。

さらに錆取りの粉がタンポの轍部に回っていて拭いきれてない場合なども同じ結果になることがあり

気密性が落ちている可能性があります。

→リペアマンに精度の高いバランスの再構築してもらいましょう。

そして

キーの芯金がよくぬけてしまう(オクターブキー、G#、左右メインキーなど、金管でもウォーターキーなど)などの症状が起こる

毎日よく吹くのに2年以上全分解調整していない楽器でキーノイズが激しい(オイルの抜け、古い金属粉のまじって酸化したオイルによる研磨ガタの発生)。

オイルが酸化してねばったりキーオイルがぬけたりして芯金が反転し抜けかけます。

たまにピボットスクリューもぬけますが、その場合ちょっとしたケアが必要で、そのキーを動かしながら締め、動きが鈍くなったところで1/2~1/4回転戻して仕上げます。

このように急ぎの場合は自分でドライバーを使って、キーの動きを確認しながらドライバーで締めますが、根本治療としては古いオイルを拭って新しいオイルを差しなおす必要やゆるんだねじ山の処理が必要になります。

→早めにキーオイルクリーニング、差し直しをリペアのプロにまかせましょう。

最後に

自分でできる基本的なケア、メンテナンスは人によって非常に面倒くさいと思う方もいますが、楽器の劣化した状態で、不具合によって、吹けないとまでいかなくても、演奏中の力みをよび、レガートが途切れ、音がうらがえってしまうといったことも起こりやすくなります。

普段から楽器構造の理解し、じっくりケアする良い習慣を身につけることで、楽器本来の鳴りを維持し、本番直前での演奏不良リスクを回避、修理にかける無駄な時間やお金を節約できます。

よいメンテナンス習慣をもっているということは、管楽器演奏者の才能の1つといえるかもしれません

ライタープロフィール

NAKKAN(なっかん)

管楽器リペアマン

NAKKAN(なっかん)

なかざわ管楽器修理工房 NAKKAN(なっかん)Re-pairによる”プレーヤーへのフィッティング” Re-tail → Re-lax → Re-vital 楽器仕立直し→身体の脱力→演奏への集中と活性化 ■ 場所 〒330-0061 埼玉県さいたま市浦和区常盤 9-34-17本多ビル2F 京浜東北線・北浦和駅 西口 約4分(信号にかからなければ3分)17号沿い、埼玉メディカルセンター(旧社会保険病院)の向かい側です。

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